スットンキョーな話で、なんかアレなんですけど、
アタシ、
虫と同衾しちゃった経験があるんです。
虫と同衾ー?とくりゃ、
良い子の北村ファンは、土斑猫を思い浮かべちゃうんでしょうが、
アタシの相手は、土斑猫ぢゃありません。
蟻です。
ある朝、目ェ覚まして、なにげに自分の右隣を見たら、
蟻が一匹、寝てたんです。
去年の、ちょうど今時分の話ですよ。
人間って、想定外のモノに接すると、ぽかーんって、
自動的に口開いちゃいますでしょ?
その時のアタシが、まさにそうでしたモン。
で、ぽかーんと開いたその口を閉じるついでに、恐る恐る、
「おはよう」って、声かけてみたんです。
そしたら蟻のダンナ、
ビビクン☆って、
バビンスキー反応を起こした後、ちゃっちゃと逃げていきました。
もしかして今、アナタの口も、うっすら開いちゃってます?
アタシに石なんか投げちゃ、イヤですよ。
蟻が通ってきてるコトに、はぢめて気ィついたのは、
一昨年の10月頃でございました。
ちょうどその頃、今住んでる家を建て直してたアタシら一家は、
借家に住んでたんですけどね。
南に面した窓の通風孔から、蟻は、隊列を成してやってきました。
アタシのお部屋には、甘いモノなんて置いてませんし、
お掃除だって、チャーンとやってますよ。 ←強調
それなのに、蟻の編隊は、
アタシのお部屋の、南に面した窓の通風孔から、毎日のようにやってきました。
やってきた蟻達は、どーゆーワケだか、
寝ているアタシの枕辺の、アタマのテップェンあたりに密集して、
触覚で、何かを探しているような動きをするんです。
食べるモノが欲しいなら、台所へ行けばいいのに、
他の部屋へは行かないで、アタシの枕辺めがけてやってくるんですもの。
まるで、このアタシが目当てみたいに思えて、
とても不思議な気分でしたヨ。
言っときますけど、この話、
実話ですからね。
アタシゃ、ホラは吹いても、なるべく、ウソはつかない生き方をしたいんです。
そうでなきゃ、良いミュータントにはなれませんものネ。
えー、小泉八雲が書いたお話のひとつに、
安芸之助とゆー男が見た、不思議な夢のお話がございます。
常世の国からやって来た使者に連れられて、
ステキな御殿へ行った安芸之助が、
国王の娘婿になるとゆー、大変結構な夢のお話です。
天女さながらのウツクシイ姫君と、華燭の祝典を挙げた上、
領地まで貰っちゃった逆タマ野郎・安芸之助クンは、
それから二十三年間を、シアワセに過ごします。
ところが、シアワセな夢から目覚めた安芸之助クンは、
自分の魂を招いた常世の国が、蟻の巣だったコトを発見いたします。
国王も、姫君も、迎えに来た使者も、
みーんな、みーんな、
蟻の化身だったんですねー。
八雲が書いたこのお話は、中国の古い伝承を下敷きにしているようですが、
蟻には、いろんな俗信がございます。
地下で生活しているところから、冥界と深くかかわっているだとか、
死んだ人間や、妖精が姿を変えたモノだとか。
このお話みたいに、
財運をくれるなんてゆー伝承もあるんですネー♡
そーゆー俗信を思い出したモンですから、アタシ、
やってくる蟻の編隊を、わりかし好意的な目で見てたんです。
もしかして俺、第二の安芸之助になれる?みたいな。
そんなアホな思惑を知ってか知らずか、
蟻の編隊は、せっせと、アタシの元へ通ってまいりました。
一昨年の暮れに、今住んでいる家へ引っ越した後も、
蟻は、やってきたんです。
借家に住んでた時とおんなじように、
アタシのお部屋の、南に面した窓の通風孔から。
フローリングの上に撒かれた住居用洗剤の飛沫にも負けず
蟻の巣コロリにも負けず
雨の日もステキにがんばっちゃう、宮沢賢治にゃ及びませんでしたけど、
蟻の編隊は、ほぼ毎日、アタシの枕辺へ訪れました。
新居へやってきた蟻の編隊が、借家ン時に来てた編隊と、
おんなじコロニーの働き蟻かどうかなんてこたぁ、アタシにゃわかりません。
種類はきっと、ポピュラーなクロオオアリだと思います。
でも、そのウチにアタシ、だんだん薄気味が悪くなってきたんです。
だって、コロニーへ持ち帰れるようなエサもないのに、
毎日のよおにやってくるんですよ?
朝、目ェ覚ましたら、
働き蟻の集団が、枕辺をウロウロしてるんですよ?
そんな状態が半年以上も続けば、
いくら物好きなアタシでも、さすがに、こう思いますよ。
いったい何が目的なんだよ☆テメーら
そんな感じで、どんどん薄気味悪さが加速してた矢先に、
おんなじおフトンでねんねしてる蟻のダンナを、
見つけちゃったワケなんですけどネ。
つづく。
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